楽しみながら健康チャレンジ!データと健康のつながりを体感する社内イベント「ウェルリンピック」とは

今回は、テックドクターで開催した社内イベント「ウェルリンピック」(Well-lympics)をご紹介します。

ウェルリンピックは、参加者が種目ごとに分かれて競い合ったり協力したりしながら、生活改善をするイベントです。

参加メンバーは「睡眠」「リラックス」「消費カロリー」の3つの種目からひとつを選び、それぞれスマートウォッチのFitbitを着用してウェアラブルデータ(※)を記録。競技ごとの基準に沿ってデータの分析を行いながら、開催期間の2週間の間に生活改善ナンバーワンを目指します。

ウェアラブルデータ……スマートウォッチを代表とするウェアラブル端末で測定された生体情報等のデータ

開催の目的

スライド資料
使用したスライド資料より

ウェルリンピックの目的はいくつかありますが、ここでは2つを紹介します。ひとつは社員が楽しみながら健康を推進すること。もうひとつは、私たちデータサイエンスチームの、健康に関するデータを扱う仕事に関するものです。

私たちは、日々ウェアラブルバイスから得られるデータを分析しています。そこで心がけているのが、「目の前の数値がすべてだと考えないこと」です。数字の向こうには身体の変化・身体の状態があるからです。

日中の歩数が減少したり、横になっている時間が増えたりする背景には、疾患や体調不良が存在します。数字の変化を通して患者様の状態を想像することこそが、分析の出発点になると私たちは考えています。

そう考えたとき、最も身近で理解しやすいデータは何でしょうか。それは、自分自身の身体から得られる情報です。

そこで弊社では、自分自身や身近な人の状態とデータを結びつけて考える習慣をつける目的で、社内イベント「ウェルリンピック」を開催しました。

取り組み紹介

今回のウェルリンピックでは、「睡眠」「リラックス」「消費カロリー」の3つの種目を実施しました。

スライド資料
使用したスライド資料より

ここからは種目ごとに、どんな取り組みをしたかを紹介していきます。

「睡眠」:改善のトップを狙おう!

睡眠種目では、「睡眠の質」改善を競い合いました。

レギュレーション

厚生労働省が作成した「成人のためのGood Sleepガイド」によれば、良い睡眠には「量(時間)」と「質(休養感)」が重要とされています。今回は生活リズムを大きく変える「量」ではなく、「質」に重点を置きました。

評価基準として、睡眠効率(ベッドにいる時間の何%の間、睡眠できているか)を採用しました。自分の2週間前の平均睡眠効率を基準として、期間中毎日の改善ポイント(%)の累積が得点になります。

上位3名には睡眠にまつわるプレゼントを用意し、楽しみながら取り組める仕組みを整えました。

期間中の過ごし方

メンバーそれぞれ工夫を凝らし、就寝前のスマートフォン使用を控えたり、ヨガや瞑想を取り入れたりと、生活に取り入れやすい改善活動を行いました。

毎日、各自の睡眠効率を共有し、睡眠の質に影響を与える要因を考察。それを互いに共有することで、自分の行動を振り返る機会としました。

さらに、改善累積ポイントのランキングも公開。楽しみながら競争心も刺激し、参加者全員が意欲的に取り組める環境を整えました。

結果

最もうまくいったメンバーでは、11日間で累積27.2ポイントの改善が見られました!

特に効果が実感された取り組みとしては、

  • 就寝前のTVドラマ視聴を控えること
  • 熱帯夜対策(室温調整など)

が挙げられます。

就寝前の行動が目を冴えさせ、入眠を遅らせ、睡眠効率を低下させることが考えられ、こうした行動を控えることが効果的である示唆が得られました。また、夏の開催という背景もあり、室温対策や寝室環境の整備が夜中の中途覚醒を減らす効果に寄与した可能性があります。

一方で、ライフイベントや騒音といった自身ではコントロールできない外的要因により、改善が難しかったメンバーもいました。
しかし、全員が睡眠の質向上に前向きに取り組み、改善意識を高められたことは、本イベントの成果と言えます。

グラフ
栄えある金メダリスト、累積改善ポイントが最も高かったメンバーのデータ。「就寝直前のネットフリックスを止めるのが効果的だった」とのことです
ホワイトノイズマシン
一位のメンバーには商品として安眠グッズ(ホワイトノイズマシン)が贈呈されました。(写真はAmazon商品ページより)

「リラックス」:リラックス度の自己ベストに挑む

リラックス種目は、リラックス度の自己ベストを更新することが目標です。
各社員が自分がリラックスできる活動(リラックス施策)を考え、生活に取り入れました。

レギュレーション

リラックス施策は毎日おなじ時間帯・所要時間で続けられる15分程度の内容で、途中で変更することも可能とし、リラックスの対象時間帯は6:00から23:45の間で行いました。

評価方法は、毎日の時間ごとのストレス度の変化を計算し、ストレス度が減少するほどリラックスできたと評価しました。
運動中のデータはストレス度の測定に影響するため除外し、対象時間帯のうち安静時心拍数の範囲内のデータを選択しました。
また、各参加者の過去のデータと照らし合わせて正規化処理をすることで個人ごとのばらつきを抑え、ストレス度の変化をわかりやすくしました。

期間中の過ごし方

毎日、前日分のストレス度の推移のグラフを作成しました。
下の図のように最もストレスが高かった時間帯3つ(Top3)と、ストレスが低かった時間帯3つ(Low3)を示すことで、各社員にどのような行動がストレス値の高低に繋がっていたかメモしてもらいます。

効果のあるリラックス施策は続け、効果がなさそうな場合は変えるなど、ベストなリラックス施策を模索してもらいました。

グラフ
ストレス度の推移グラフの例
結果

リラックス施策を行うことでストレス度が下がり効果を実感できた社員と、そうでない社員がいました。

ストレス度が下がった施策の例としては、

  • 好きな飲み物を飲みながらドラマを見る
  • 静かに音楽を聞く
  • 瞑想

などがあり、これらの施策はリラックスに効果的なのではないかと考えられました。

また、リラックス施策を行った時間以外でストレス値が下がっていた例として、

  • 自宅やオフィスに着く
  • 会議が終わる
  • 仕事が終わる
  • 家族のお手製のパンを食べる

などがありました。

逆に今回あまり効果的でなかったリラックス施策としては、

  • 音楽を聴く
  • 読書

などがありました。

データを可視化することで、普段自分が意識していない「リラックスしている瞬間」を実感することができました。

バスボム
リラックスアイテムの1つとしてみんなで購入したバスボム

「消費カロリー」: メンバー全体で目標達成へ

消費カロリー種目は、参加者全員が一つのチームになる協力種目です。「消費カロリー合計で目標をクリアする」ことが目標です。

レギュレーション

参加者は自分が継続可能な運動を選び、2週間にわたり実践。国が推奨する1日の運動量である300kcal(1日1万歩相当)の消費を、ひとりあたりの1日の目標に設定しました。

全体としては、参加者10人が11日間(検証期間)取り組み、合計33000kcalを消費するのが目標です。

※Fitbitから得られるデータは1日の合計消費カロリーのため、取り組みを始める前に、参加者それぞれに身長・体重・年齢から基礎代謝を算出してもらいました。1日の合計消費カロリーからその基礎代謝を差し引いたものを運動による消費カロリーとして定義しました。

期間中の過ごし方

ウォーキングやジョギングをはじめ、ジムでの筋トレなど、楽しみながら継続できる運動が多く取り入れられました。
また参加者同士で進捗を共有し励まし合うことで、自然とチームの団結力が高まりました。

2日に1回ほど、参加者ごとの消費カロリーを共有し、「〇〇さんの消費カロリーが高いけどどんな運動をしているのか?」などと他メンバーの運動内容を参考にしたり、「この日は天気が良かったからたくさん歩いた」「調子が悪かったから無理せず休んだ」といった進捗の振り返りも行いました。

スマホのヘルストラッカーの画面キャプチャ
自分の運動状況を送り合うなど楽しく進めました
結果

合計33000kcalの消費を目指しましたが、最終的には目標を大きく上回り、90000kcal近い消費カロリーを記録しました!

期間の後半には全体的に消費カロリーが減少傾向になりましたが、最終日には参加者全員が盛り返し、最終的にどのメンバーも1日平均300kcalを上回る消費を達成。

定期的なフィードバックとチームメンバー同士の励まし合いが功を奏し、期間中には「これまでより運動量が増えた」「日常的に身体を動かす習慣がついた」との声が挙がりました。

チーム全体で協力しての取り組みが、モチベーション向上や健康習慣の定着に大きく貢献したのではないかと思います。

消費カロリーが多かったメンバーにはジムに行っている人が多く、活動内容としては筋トレや有酸素運動で高い心拍数の状態をキープするのが良さそうという意見が出ました。

グラフ
日ごとの累計運動消費カロリーの推移(赤が目標、青が測定値)
グラフ
メンバーごとの日ごとの運動消費カロリー

※消費カロリーはFitbitの合計消費カロリーから基礎代謝を差し引くことで算出しましたが、Fitbitの詳細な仕様が不明なため、実際の消費カロリーより多めの値が出ているかもしれません。もしかしたら、平均心拍数が高めの参加者では、消費カロリーが高めに算出される可能性も考えられます。

得られた気づきと次へのステップ

今回の「ウェルリンピック」を通じて、社員の健康意識とデータへの理解が一層深まる結果となりました。

参加者からはこんな声がありました。

  • ウェアラブルデータの記録の重要性があらためてわかった。
  • データをちゃんと見て、改善する動きが取れて良かった。
  • 自分のデータをよく見たことで、データと体調の関係をもっと知りたくなった
  • 健康について他の社員と話し、コミュニケーションを取る機会が増えた。

総じて、データを通じて自身の体調や生活習慣を振り返る良いきっかけとなったようです。また、「健康とデータの橋渡し」というイベントの目的も少なからず達成できたと感じます。

ウェルリンピックは継続的に開催していきたいと思います。

今後は、現在の年1回から数ヶ月に1回など開催頻度を増やして継続的な健康促進を目指したり、期間も今回の2週間よりも長くする、また他の種目に参加中のメンバーとの交流を増やしたりすることで、より多くの学びや発見が期待できそうです。
さらに深いインサイトを得られるよう、一層工夫を凝らしていきたいと思います。

まとめ

データ分析を通してデータと健康を結びつける試みとして、社員一人ひとりの意識醸成とスキル向上につながった今回のウェルリンピック。あらためて「データは体調のサインを示す」ということを、私たちに実感させてくれました。

データが示す「体調のサイン」とその背景を一つ一つ解き明かすことは、体調不良や疾患への理解を深め、新たなdBM(デジタルバイオマーカー)の開発につながります。

※デジタルバイオマーカー……デジタルデバイスで測定した『日常データ』をもとにした、病気の早期発見や治療につながる客観的指標

そして何より、悩みを抱える多くの方々の助けになることを願い、私たちは日々研究・開発に取り組んでいます。
ウェルリンピックは、そんな私たちにとって健康データ分析の視野を広げる第一歩となったのではないかと思います。

似顔絵
書いた人:瀬川