行動を分解すると、課題や解決策が見えてくる~「プロダクトデザインの第一歩」体験ワークショップ

こんにちは、プロダクトデザイナーの庄司です。
今回は、社内で「プロダクト開発を皆に身近に思ってもらう」を目的として開催したワークショップについて紹介します。

弊社では毎月末にその月の成果等を発表する締め会(*1)を行っています。

その中に毎月テーマを変えた全社ワークショップの時間があり(*2)、先日は私がファシリテーターとなりプロダクトデザインに関するワークショップを開催しました。

*1 参考:文化は育てるもの。また“締め会”で会いましょう
*2 参考:問いを囲んで、チームを耕す月イチワークショップ

デザインとは設計である

もともとは、毎月のワークショップを主催している組織開発のメンバーから打診を受けたのがきっかけです。

「新規プロダクトのリリース予定もあることだし、プロダクト開発を皆に身近に思ってもらえるように、デザインのワークショップを行いませんか?」というオファーでした。

説明スライドのキャプチャ

  1. 新規アプリの開発が進行中だが、社内のデザインへの理解がまだ浅い。
  2. プロダクト開発全体をデザインの観点で巻き込むことが必要。

このような課題意識を受け、情報設計の体験をしてもらうワークショップを考えました。
プロダクトデザインは、デザインという言葉のイメージから、どうしても「見た目を整える仕事でしょ?」と思われがち。確かにそういう側面もあるのですが、実際にはプロダクトの体験やそのプロダクトがもたらす課題解決まで含めた情報設計を行う仕事です。デザインとは設計であると理解してもらうことが第一歩。

そんなわけで、学生時代に「インフォメーション・アーキテクト」の授業で行ったワークを大いに思い出しつつ、多少の応用を加えたワークショップを考えました。

このワークショップは、2つのパートで構成しました。
①行動を洗い出す
②課題を見つけ、ソリューションを考える
順に紹介していきます。

①行動を洗い出してみる

例として「カップやきそばを作って食べる」場合。
その中にあるたくさんの行動を、ひとつひとつ書き出してみます。
「ビニール包装を取る」「蓋を開ける」「あと入れの袋を取り出す」……。

実際にやってみると、全てを書き出すのは果てしない作業に思えてくるかもしれません。
一つの行動として扱っているものでも、考えてみると実は無数の行動の連なりであることに気づくからです。 また、同じ「ビニール包装を取る」にしても爪を立てるのかハサミを使うのかなど多くの派生が生まれうるでしょう。

しかし今回はざっくりこれだけの行動の連なりで体験ができているということが分かればいいです。例えばこのようなサンプルを作成しました。

カップ焼きそばを作って食べる工程の図。11工程ある
良い洗い出しの例
カップ焼きそばを作って食べる工程の図。2工程
大雑把すぎるのは×

個人ワーク「歓迎会ランチの予約をするときの行動」

ワークショップでは、このパートは個人ワークとして行いました。時間は10分間。

テーマは「歓迎会ランチの予約をする」に統一しました。テーマを自由設定にせず統一することによって、あとで比較しやすく、人によって行動を分解する粒度の違いも見えやすいからです。
またより具体的にイメージするため、「ランチ参加人数10名」「12:00〜」「オフィス周辺」「予算2,000円以下」といった条件も付け加えています。

ワークはmiroにスペースを作って行いました(FigJamなどの他ツールや、紙の付箋でも実施できます)。
自分の名前のあるエリアに、一つの行動につき一つの付箋を貼っていきます。

ワークの結果

ワークの結果

まず最初の行動を見てみても、「何を食べるか考える」「アレルギーについて聞く」、はたまた「社内のグルメの●●さんにまかせる」のようなユニークなものまで個性が出ます。

終わらせ方についても、「予約」で終わる人もいれば、「予約完了のslackを送る」「カレンダーにお店のURLを貼る」など、どこまでを一連の行動とみなしているかが可視化されて非常に興味深かったです。

②課題を見つけ、ソリューションを考える

さて、行動を書き出していくにつれ、いろいろなことが見えてきます。
「この行動の不便を解消するためにこの機能が生まれたのでは?」という気づきを得たり、「こうすることで解決できるのでは?」と課題の解決法を思いついたり。

たとえばカップ焼きそばの例であれば、「お湯を捨てる」時にうっかり麺も一緒に流してしまう……という不便が思いつきますし、そのためのソリューションとして湯切りの穴が開発されたのだろう、ということも想像できます。

説明用スライドのキャプチャ

別の例として、情報デザインの大切さとして私がよく引き合いに出す事例があります。1996年に発売された日立の冷蔵庫、「野菜中心蔵」です。

それ以前の冷蔵庫は野菜室が一番下なのが普通でした。しかしこの製品は野菜室が真ん中にあります。使用シーンの行動を洗い出していくにつれ、「野菜を取り出すためにしゃがまなければいけない」という課題(ペイン)に行きつき、その解決案として野菜室を中心におくという手段を取ったであろうことが想像できます。

説明用スライドのキャプチャ

こういった気付きは、日常の中にも隠れています。

「帰宅」の行動を洗い出してみる
→「手を洗う」際に毎回「泡立てる」という行動が発生する
→「泡立てる」手間を解消するための、プッシュすると泡で出てくるディスペンサー

「webで新規会員登録」の行動を洗い出してみる
→住所を入力するフォームで、郵便番号にくわえ全ての住所を手入力する行動が発生する
→郵便番号を入力すれば、地名まで入力された状態になる自動入力フォーム

などなど。

ちなみに、ここに行動に付随する感情変化を付け加えていけば、いわゆるカスタマージャーニー、ペイシェントジャーニー等を作成することができます。(が、長くなるのでそれに関してはまた別の機会に...)

グループワーク「歓迎会ランチ予約のソリューションを考える」

ワークショップでは、このパートは40分間のグループワークとして行いました。
ランダムに指定した4~5人ずつのグループに分かれ、「行動に対するソリューションを考えてみる」をテーマにディスカッションしてもらいます。

まずは個人ワークで自分が書き出したものをグループ内で共有しあいます。
その後、みんなに共通していた行動や、書き出してみてストレスがあると感じた行動、この行動に対してこんな機能や仕組みがあったら問題が解決されるのではないか……などを話しあってもらいました。
実現可能かどうかは置いておいて、あくまで自由に話し合ってもらうのがポイントです。

最後にそれぞれのグループの代表に、どんな案がでたのかを軽く紹介してもらいました。
「多数決が決まったら勝手に予約されるシステム」「AIエージェントで条件の店をリスト化」のような開発者らしい意見が出たり、「歓迎会はいつも同じお店にする」といったそっちで解決するんかい!と笑ってしまいたくなるようなアイディアも出てきて、大変興味深かったです。

ワークショップを終えて

今回のワークショップは、情報設計というデザインの基本の部分を身近な行動に落とし込んで体験してもらおうというものでした。

どんな行動でも、洗い出し細分化していくと、無意識に行っていた無数の行動が存在することに気づきます。そしてそこには必ずユーザーの体験を改善するヒントが隠れています。

デザインとは何かを体験する目的のみならず、サービスやプロダクトを新しく考える時、はたまたそれらのUXを改善したい時など、行き詰まったらまずは「行動を洗い出してみる」ワークをぜひやってみてください。


似顔絵
書いた人:庄司