こんにちは、データサイエンス部の深見です。
テックドクターのデータサイエンスチームでは、定期的に学会への参加や登壇を行なっています。今回は7/11-12に浜松町で開催された第22回日本うつ病学会総会にてポスター発表を行なってきましたので、その内容を紹介いたします。
私自身はちょうど一年前の日本睡眠学会での登壇以来、久しぶりの学会参加でした。またポスター発表となると本当に久しぶりで、最後は学生時代だったかもしれません。
私以外にもテックドクター社としては、これまでにも日本リウマチ学会や国際医薬経済・アウトカム研究会(ISPOR)など国内外の様々な学会に参加して研究の成果を報告しています。
今回の発表内容は、いわゆるケーススタディという形式で、一人の被験者の長期に渡るウェアラブルデバイスのデータを解析したものです。
ウェアラブルデバイスを使うと、これまでは病院に来院したタイミングでしか分からなかった被験者の状態が、連続的にかつ細かな粒度で把握できます。このことが医療の質を上げるのに役立つと期待されています。
特にスマートフォンやウェアラブルデバイスから得られる生体データをもとにした指標「デジタルバイオマーカー」は、疾患の有無や病状の変化を客観的に評価することができる可能性を秘めており、その開発は国内でも注目が高まっています。
※デジタルバイオマーカーの詳細については弊社の下記サイトを参照してください。
デジタルバイオマーカー | TechDoctor
対象データ
収集したデータは、ウェアラブルデバイスFitbit Charge 6を使った生体データ(測定値)と、eMoodsというアプリを使った主観データ(自己申告の症状記録)です。それぞれどんな項目が対象かは、下記の表を見てください。

期間としては2024年2月から11月まで9ヶ月間のデータを解析対象としました。こちらは現在も収集が続いており、今後も継続して解析を実施する予定です。
解析方法
主観データの中でも、特に「抑うつ気分」に着目、この指標と連動する生体データがないか調べました。
具体的には、
心拍数データをもとに算出した心拍変動指標
例)
・睡眠中の平均心拍数
・自律神経の活動を評価する複数の心拍変動
睡眠指標
例)
・ 睡眠時間
・各睡眠ステージ(覚醒/レム睡眠/浅い睡眠/深い睡眠)の時間や比率
などを使用しました。
これらの指標を1日ごとに算出、大きく変動した値(全期間の平均と標準偏差から、平均値±標準偏差以上、離れているもの)を異常値として抽出しました。
解析結果
副交感神経の活動を評価するRMSSD(Root Mean Square of Successive Differences)という心拍変動指標があります。一般的に、RMSSDの数値が大きくなると副交感神経が優位になる=リラックスした状態、逆に値が小さくなるとリラックスできていない状態と考えることができます。
今回の研究により、睡眠中のRMSSDの値に抑うつ気分との関連が見られることがわかりました。
実際のデータを見てみましょう。

特に期間の後半、抑うつ気分の高まり(図中、青棒グラフが2点以上)とともにRMSSDのトレンド成分(図中、赤線グラフ)が下降していました。
また期間中にRMSSDが平均より大きく低下(1.5SD以上)した日が14日ありましたが、そのうち12日にその後1週間以内に抑うつ気分スコアの上昇が確認されました。
これらの結果は、睡眠中の副交感神経活動の低下を見ることでその後の抑うつ気分を予測できる可能性を示しています。もっと研究を進めることで、抑うつ気分を推定するバイオマーカーとして有用と判明するかもしれません。
今回の発表では一人の被験者に対して抑うつ気分との関連を調査しましたが、抑うつ気分以外の主観指標と生体データの関連の解析や、大人数を対象にした検証も実施しています。今後さらに内容を充実させた上で論文を投稿する予定です。
発表を通しての印象
ポスター発表では演題が60以上あり、演題番号が奇数のものが初日に、偶数のものが2日目にそれぞれ30分発表を行う形式でした。
私の発表は2日目の土曜日の14時からと比較的足を運びやすい時間帯だったこともあってか、時間中ひっきりなしに質問があり、5名程度の方に説明をすることができました。それ以外にも足を止めてくださる方、遠目に見ていただける方が何名かいらっしゃいましたのでそれなりに興味を持っていただけたのではないかと思います。
※会場内撮影禁止でしたので残念ながら写真はありません…
またポスター発表の他にも、父親の産後うつに関するセッションや、精神疾患の治療において薬を使った場合と精神療法を用いた場合の比較に関するセッションに参加し、最新の研究に触れることができました。こういった知見を日々の研究に活かしていきたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。テックドクターは、研究成果を今回のような学会発表や論文投稿という形で発表することで、医学の発展への貢献を目指しています。また対外的な発表以外にも特許という形で成果を残すこともあります。今後も学会発表や論文投稿した際には随時発信していきたいと思います。

書いた人:深見